allure Korea 2月号

キム・ミョンミンとハン・ジミンの濃密な時間
The Partners


映画<朝鮮名探偵>の二人の名探偵はキム・ミョンミンとオ・ダルスだ。
しかしこの映画を引っ張っていくキャラクターを選ぶとすれば、キム・ミョンミンともう一人、まさにハン・ジミンだ。
事件を暴き出すキム・ミョンミンと事件の鍵を握ったハン・ジミンのスパイゲームが話の大きな部分を占めているからだ。
破格変身で世間の話題を集めている二人の俳優のパートナーシップと演技対決が気になった。



キム・ミョンミンとハン・ジミンの出会いを世紀の出会いだと呼ぶことはできない。しかし演技が上手い二人の俳優。キム・ミョンミンとハン・ジミンのキャスティングは映画<朝鮮名探偵:トリカブトの秘密(以下朝鮮名探偵)>に対する盲目的な信頼を産む。たまに面白くないシナリオを魅力的な俳優が救い出す場合もあるのだから。近くには<みみっちいロマンス>がそうではなかったか?息がぴったり合うカップルの演技は物語と関係なく観客をそわそわさせるのだから。キム・ミョンミンとハン・ジミンがどのような絵を描き出すのか。ほのかに期待できるのは事実だ。さらにこの映画はこれまで韓国映画界になかった“名探偵”のキャラクターを扱った韓国型スリラー・コメディ映画だ。韓国版シャーロックホームズであるということ。シャーロックホームズにとって忘れることのできない恋人“アイリーン”がいたように。ジェームスボンドにボンドガールがいるように。“名探偵”にも見方なのか敵なのか見分けがつかないファムファタール“漢客主”が登場する。彼女がまさにハン・ジミンだ。正祖の密令を受けパク・ボンタルの殺人事件をはじめ、敵のトリカブト村で引きおこる奇異な事件を暴こうとする“名探偵”と事件の鍵を握っている“漢客主”の押したり引いたりの神経戦はこの映画の重要なテーマ。だからキム・ミョンミンとハン・ジミンの演技対決がどれほど熾烈で二人のパートナーシップがどれだけ濃密なのかによって映画の興行成敗がかかっていると言っても過言ではないだろう。

ハン・ジミンが<朝鮮名探偵>を選択するのでキム・ミョンミンは少なくない影響を受けた。構成がしっかりしたシナリオほど信頼が行った。
“実際、時代劇だというのでためらいました。<イ・サン><京城スキャンダル>など時代劇がずっと続くと思って。現代劇をしてみたかったんですよ。でも名探偵の役がキム・ミョンミン先輩だというので。一度やってみようと思いました。オ・ダルス先輩もキャスティングされた状況だったんですが。お二人が描き出すお話を頭の中で想像してみたら面白そうだという信頼が生まれました。”
10歳の年の差があるキム・ミョンミンにきちんと“先輩”と呼ぶハン・ジミンが彼をきわめて礼儀正しく敬うのだが、キム・ミョンミンは彼女を末っ子の妹に接するように絶えずからかっている。
“私もハン・ジミンさんが漢客主役を引き受けるだとろうと知って先に<朝鮮名探偵>を選択しました。”
“いやん、先輩。またそんな!”
“ハン・ジミンさんが漢客主役にキャスティングされた時、正直意外でした”
“そうじゃないのに。そう思われたんじゃないですか”
ハン・ジミンはキム・ミョンミンのユーモアに積極的に守りの姿勢を取っていた。撮影現場でどれだけキム・ミョンミンが愉快だったか。どれだけ冗談をしょっちゅう飛ばしていたのか。撮影現場の雰囲気を盛り上げるためにどれだけ努力したのかおのずと感じるようになった。キム・ミョンミンの話が続いた。

“まあ、私は俳優についてよくわかりません。実際、経験してみないと良く分からないことじゃないですか。その俳優が見せてくれる演技、我々がなんとなく知っている姿でその俳優を判断するようになるじゃないですか。観客たちもそうですが、俳優も同じです。だからイメージキャスティングをするんですし。このようなキャラクターにはこのような俳優が似合うようだと思うんですよ。漢客主の役にハン・ジミンさんがキャスティングされたという話を聞いて、‘お?似合うかな?’と思ったりもしました。監督のキャスティングに驚いたんですよ。ハン・ジミンさんのセクシーなイメージを想像してみたことがなかったので。でもハン・ジミンさんが客主として完璧に変身した時もう一度驚きました。‘この姿が実際の内面の姿じゃないか?’と聞いたぐらいに漢客主のファムファタールキャラクターをきちんと表現してくれたと思います。撮影をすべて終えてみると、清楚でありながらもセクシーなキャラクター。二つの多様な姿を誰が果たしてこのようにうまく表現し出すことができるだろうかと思うほどでしたよ。特に名探偵と漢客主が対峙する場面があります。そこで私は完全に戦意喪失しましたよ!ジミンさんにこんな面が?おそらく皆さんも同じように驚くと思いますよ。”
“名探偵が気持ちがくじけなければならないシーンですよ。そのような演技でさえ本当にお上手にされるでしょう。私のようなものが誰かの演技を上手い、上手くないと評価することができる立場ではないですが。ミョンミン先輩は本当に申し分のない演技を・・”
“今回わかったでしょう。けちをつけるところがあるなあ。”
“もう〜先輩!そうじゃないです!”

「演技が上手い俳優」として公認されたキム・ミョンミンはハン・ジミンを口がすっぱくなるぐらいに誉めちぎり、ハン・ジミンは気恥ずかしくなりながらもやはりキム・ミョンミンを立たせることに忙しかった。ベストカップル。ピンポンゲームをするように賞賛一色の会話にうんざりしてきた私はプロたちの演技対決についてすっと話を切り出した。

喰う喰われる、奪う奪われるという。いや奪われないようにしようとするスパイゲームの役を引き受けた二人の演技対決に対して期待が大きかったので。だがキム・ミョンミンの言葉はちょっと意外だった。“ライバルのキャラクターとぶつかるシーンが多ければ、相手俳優と演技対決が生じることもあります。でも‘名探偵’と‘漢客主’は実際そのような関係ではないです。最初の1,2シーンは争うようなシーンもありましたが(若干ネタバレのため省略)。このようなストーリーがベースに引かれているということを知って演技をするのはだめなことですが、相手が悪い人ではないということを分かっているために目に火を燃やして争うようにはならないんです。俳優としての演技対決も同じです。あるシーンを撮る時、‘この場面はお前のものにしなくちゃ!’とおっしゃるPDの方と監督さんがいますが、私はそれは理解できません。場面はものにするものではないじゃないですか。私は私より経験を積んでいてエネルギーが多くて演技力が抜きんでている俳優と出会ったら、「あ、あの俳優に殺されないようにしなきゃ」「このシーンを失わないようにしなきゃ」とは思わないです。「あ、あの方と演技したら私は演技が自然に上達するな」「本当に上手い。このシーン、演じるのが大変だけど、あの方の演技に乗っかって行くことができるな」と思うんですよ。運動も同じじゃないですか。私よりも上手い人と見方になってオリンピックに出れば頼もしいじゃないですか。でも新人たちの中に間違って考える俳優が何人かいるようです。ひとつのシーンの中で誰と出会うかによって、私が死んで、お前が生きて、そうではないんですよ。そのシーンの中に一緒に入って行く以上同じ船に乗って行くんですよ。私なら、私より上手い人に会ったらさらに良いと思います。そうすれば出ていって戦う時誰であれ、どんなことであれ、勝つことができるじゃないですか。上手い人としてこそ上達しますよ。運動も、演技も。”



キム・ミョンミンのスィッチが入った。ちょっとずつユーモアを混ぜたジャブを打ち、演技対決という単語を通していつもの演技観が溢れだし、何人かの新人の演技者たちに憂慮の一撃を飛ばした
オ・ダルスとキム・ミョンミンの撮影を眺めながら、そしてキム・ミョンミンと一緒に撮影しながらハン・ジミンも映画の演技に対する気持ちがうんと変わっていった。

“実際、映画はいろんなシーンを撮るじゃないですか。なのでいつも次のシーンが準備されていると思っていました。今回演技がちょっと満足いかないと思えば、もう1回撮ることができるという安易な考えを持っていたようです。でもミョンミン先輩と作業をしながら考えがちょっと変わりました。‘OKが1回で出ることもあるなあ’という思い?私が‘もう1回だけ撮りたいです。’と言ったことが恥ずかしいぐらいでした。撮影する前にさらに徹底して、さらにきちんと準備する以外になかったです。共に作業をしたということ自体が私には大きな悟りにつながったと思います。何よりもすごくびっくりするのは、休憩時間にもひたすら何かアイディアを考えて作りだされることです。監督に提案されながらそれが映画に反映されるのですごく面白かったです。”

ハン・ジミンとキム・ミョンミンが最初からこのように信頼し合っていたわけではなかった。今回の映画で初めて出会った二人。性格は良いがちょっと人見知りをするハン・ジミンにまじめなイメージのキム・ミョンミンは少し気難しく見える相手だった。

“演技する時に一番重要なのは相手俳優との呼吸じゃないですか。特に私は相手俳優と親しくなれなかったら目も合わせられない性格です。でも漢客主は目をぐっと見据えて話をしなければならないキャラクターじゃないですか。キム・ミョンミン先輩がすごく気難しいように思えて監督にどんな方なのか聞きました。‘意外に’気楽な男だとおっしゃってくださったんですよ。とりあえず安心しましたよ。いざ現場に行ってみたらすごくユーモラスな性格なんですよ。先輩、違う現場でもこのように面白いキャラなんですか?でなければ私たちの映画が面白い映画だから、先輩のキャラクターを維持しようとそうだったんですか?もともとスタッフたちに先に近づいてスタッフの名前を一人一人覚えて、おいしいものもたくさん御馳走してくださいます。”

“我々が親しくなったのは私のせいではないですよ。ジミンさんのおかげでしょう。ジミンさんが元々性格がいいじゃないですか。優しくてよく笑って、気さくで。私はそんな風にするなと言いました。女優は神秘的でなければいけないし、距離感もちょっとないといけないですから。実際とても気安いのは良くないと思います。俳優はイメージというのが必要ですからね。”

“台本練習の時ミョンミン先輩に初めてお会いしたんですが、私より先に近づいてきて挨拶してくださったんですよ。練習が終わっても‘ジミンさん、セリフのトーンが良いと思います’と先におっしゃってくださいました。”

二人の俳優の話を聞いていると映画撮影現場でキム・ミョンミンとハン・ジミンの姿が目に浮かんだ。撮影現場を意のままにしているキム・ミョンミンとその横で末っ子の妹のようににこにこと笑うハン・ジミンは監督の‘Ready Go!’の声と共にカメラの中にのめりこんで行ったのだろう。

“映画撮影が終わるというのはとても心残りでした。撮影をもう少ししながらキム・ミョンミン先輩にさらにたくさん教わりたいです。次の映画でミョンミン先輩にまたお会いできたらいいですね。”

“私の顔を見て笑いさえしなければ次の映画でメローもいいし”

最後までユーモアを飛ばすキム・ミョンミン。実際彼のユーモアは映画現場の情熱をさらに熱くするための潤滑油だ。彼の熾烈な愉快さとハン・ジミンのさっぱりとした気さくさが結合しながら<朝鮮名探偵>全スタッフたちのパートナーシップはさらに頼もしくなって行った。そしてキム・ミョンミンとともに<不滅の李舜臣>を共に作業したキム・タックァンの原作<烈女門の秘密>が映画<朝鮮名探偵>で生まれ変わり、おとぼけ天才‘名探偵’とセクシーなファムファタール‘漢客主’など生き生きとしたキャラクターで具現化されたのは明らかな事実のようだ。1本の映画によって人を得て、キャラクターを得たので、このぐらいになると映画興行と関係なく二人の俳優の心の中でこの映画は成功した作品ではないだろうか。



キャラクターを創造する行動アーティスト、キム・ミョンミン

国内でメソッド演技をする数少ない俳優として指折り数えられるキム・ミョンミン。精神と肉体の限界まで追い込みながら演技を見せる彼は出世作<白い巨塔>だけでなく映画デビュー作<鳥肌>、最近の作品では<破壊された男>そして20kg減量して話題を生んだ映画<私の愛、私のそばに>、MBC演技大賞をわしづかみにした<ベートーベン・ウィルス>までほとんどすべての作品で深刻で威厳があって、時には生意気に見えるほどマッチョなキャラクターを演じてきた。そのような彼がコミック演技を無理なく観客に伝えることができるか?どうやらキム・ミョンミンはコミックなキャラクターさえも重みのあるようおに伝えるような感じがした。あるインタビューでオ・ダルスがキム・ミョンミンについて“オーバーな演技について信念を持って演技するのでものすごく驚いた”と語った記事を読んで笑ったことがあるのだが、実際にキム・ミョンミンと話を交わして見るとオ・ダルスがなぜこのような話をしたのか十分に理解ができた。

“コミック演技?そのような用語はないです。コミック、スリラー、メローなど映画のジャンルを分けることはできますが、演技をジャンルで分けることはできませんから。恐怖演技をどうやってできますか?ウワ〜!これが恐怖演技ですか?ある人がすごく怒って表に出てきて、花壇につまずいて転んだとしましょう。その人は道を行き交う人に大きな笑いをプレゼントするでしょうけど、元々コミックなキャラクターの人ではないじゃないですか。‘名探偵’を演じながらもこの人がコミックなキャラクターだと思わなかったです。‘名探偵’という人は下級両班のようなみすぼらしさとずうずうしさを武器に探偵という身分を隠したまま捜査をして行くのに役に立っていると考えました。コミックに見えるのは彼の武器であるだけです。‘名探偵’の役がコミックなキャラクターだと思ったら、この演技を始めることもできなかったでしょう。コメディ演技に対するプレッシャーがすごく大きくて、オーバーな演技をしようとしたはずですから。‘あ、コミック演技をどうやって。幼稚だ’と思ったかもしれないですし。”

コミックキャラクターを演技するのは自信がないと大げさに訴えたが、キム・ミョンミンは撮影現場のムードメーカーとの噂でもちきりだった。ハン・ジミンが話した通り彼は一番若いスタッフの名前まで全部覚える情の深い男であり、撮影現場で笑いがなければだめだと考えるユーモア至上主義者だった。撮影現場の雰囲気を最好調に引っ張っていくのに必要なすべてのことをキム・ミョンミンは自ら動いて実現した。

“毎作品を通して得る物は多いですが、人を得ることが一番でしょう。<朝鮮名探偵>を通してダルス兄さんを得て、ジミンさんを得るようになって、スタッフたちと家族になりました。彼らに学ぶことは本当に多いです。特に一番年下のスタッフはほとんどおこずかい程度のお金をもらって仕事をするじゃないですか。あの子たちが後で5年10年後に韓国の映画を背負って立つようになると思うと胸が熱くなります。1日2日徹夜しながら苦労してもその情熱が冷めないままそれぞれのポジションで仕事をする姿を見ると、その姿自体が本当に感動的です。私はスポットライトを浴びる俳優という職業であるのが幸運だと思いますし、私を照らしてくれる彼らがすごく有難いです。監督はあっちの遠くからモニターを見て、実際に照明器具を持って私の顔を照らしてくれるのは一番下のスタッフたちじゃないですか。私が急な用事ができたり、疑問が生じた時、聞くことができる子も私のすぐ横の若い子たちですし。その時私が‘やあ、そこ、おい’このように聞くのと、‘テホ、チョンミン’と呼ぶのとでは完全に違うでしょう。それが目に見えないですが撮影現場にエネルギーを植え付けてくれるんです。とても小さいことですがそのようなことによって活気がまさに満ちてくるんですよ。”

キム・ミョンミンが求めることが雰囲気の良い撮影現場だけではない。彼は休憩時間にもアイディアを出して監督と打ち合わせる創造的な男だ。

“俳優も芸術家に属すると思います。ひたすら創造しなければなりませんから。私が知っているキャラクターを繰り返しやって演じるのは面白くないでしょう。他のキャラクター、また違うキャラクターをずっと作りながら俳優として満足を感じるんでしょう。それが一番目で。それを見て手を叩いてくれて、応援してくれる観客に力をもらってその次の創造作業に入って行くのが俳優の2番目の満足です。創造作業をなまけたらそれだけ叱咤が飛んで来ますし。簡単なことではないです。”

キム・ミョンミンが新しく創造し出した‘名探偵’はどんな被写体なのか、かなり期待される。





エディター:パク・フニ

翻訳:SAMTAさん〜感謝☆

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